冬になると、台所に立ったときの空気が少しだけ重く感じられる。外の冷たさが身体の奥に残り、呼吸が浅くなるような季節。そんな冬の時間に寄り添ってくれるのが、スパイスの香りが立ち上がるマサーラー・チャイだ。カルダモンやシナモン、クローブを砕くときの音、鍋の中でふわりと香りが広がる瞬間、そしてアーモンドミルクを注いだときのやわらかな色の変化。五感が静かに目覚めていくような、冬の台所ならではの儀式になる。
本場のチャイはとても甘いけれど、甘さを控えめにするとスパイスの香りがより繊細に感じられ、身体にすっと馴染む。アーモンドミルクを使うことで軽やかさが生まれ、飲み終わったあとに重さが残らない。冬場は生姜を加えたり、ピンクペッパーをひと粒落としたりすると、身体の中心がじんわり温まり、巡りがよくなる。
スパイスは組み合わせ次第で表情が変わる。柑橘の皮やフェンネルを加えると爽やかさが生まれ、飲み飽きない味わいに。レモン汁を最後にひとしずく落とすと、冬の空気に小さな光が差し込むような明るさが加わる。牛乳も白砂糖も使わず、身体にやさしい素材だけでつくる冬のチャイ。心も身体もほっと緩む、静かな一杯。

