冬の重さがまだ身体の奥に残っているのに、光だけが少しずつ春へ向かって変わり始める「冬明け」。この季節は、身体がゆっくりと外側へ開き始める時期で、香りのある葉物がふっと心身を軽くしてくれる。春菊のほろ苦さは、まさに季節の境目を象徴する味。冬の間に閉じていた呼吸が、少しずつ広がっていくような感覚がある。
春菊を刻むと、青い香りが台所に広がり、冬の静けさの中に春の気配が混ざり込む。そこに生姜の温かさが加わると、身体の中心がじんわりと温まり、冬明け特有の「冷えと軽さの混在」をやさしく整えてくれる。Herbal Kitchen の料理は、味よりも“気配”を扱う。焼き上がるときの香り、フライパンに触れる生地の音、ほろ苦さの余韻。これらすべてが、季節の移ろいを静かに語ってくれる。
チヂミというと重いイメージがあるかもしれないけれど、春菊を主役にすると驚くほど軽やかで、冬明けの身体にすっと馴染む。外はカリッと、中はふんわり。香りが立ち上がる瞬間、台所の空気が一気に「初春」へと変わる。季節の入口に寄り添う、やさしい一皿。

