月明かりの棚田にて

月明かりの棚田にて

月の光が、山の稜線を静かに浮かび上がらせていた。 その奥に眠る力が、まだ息づいているような気配がある。

空には、細く欠けた月と、散らばる星々。 その配置に意味を求めるわけではないけれど、 ただ見上げた瞬間、内側で何かがふと動いた。

手前には、水を湛えた棚田が広がっている。 月明かりがその面にそっと触れ、 静けさの中に光が滲んでいた。

森の影が寄り添い、 人の営みと自然の呼吸が、 ひとつの風景として重なり合っているように見える。

この場所では、 暮らしと大地が互いに耳を澄ませながら、 季節の巡りとともに静かに育っているのかもしれない。

言葉にするにはまだ早い感覚。 けれど、確かにそこにあった。 この夜の風景が、何か古くて確かなものを 静かに呼び起こしたから。

だから、記しておきたいと思った。 月明かりの棚田に触れたこの瞬間が、 内側の深いところで、 まだ名前のない揺らぎをそっと灯したことを。