朝の光が、部屋の隅に薄く落ちていた。 冬の冷たさはまだ残っているのに、 その光の中には、かすかな緩みが混ざっていた。 季節が動きはじめる前の、 静かな前触れのようだった。
窓辺の影がゆっくり伸びていく。 輪郭は柔らかいのに、 その奥には、落ち着かない気配が薄く漂っていた。 前に進みたい気持ちと、 まだ立ち止まっていたい心の影が、 同じ場所でそっと揺れていた。
光の質が少し変わるだけで、 胸の奥の温度もわずかに動く。 進めるかもしれないという予感と、 まだ動けないままの静けさが、 同じ光の中で重なっていた。
昼が近づくと、風の温度が少し緩んだ。 冬の匂いの奥に、 春の気配がほんのわずかに混ざりはじめている。 けれど、その変化をそのまま受け取るには、 まだ少しだけ時間が必要だった。 光の明るさよりも、 その手前にある曖昧な空気のほうが、 今日の自分にはしっくりきた。
影の揺れが、いつもより静かに見えた。 その揺れの奥には、 小さな希望の粒のようなものが確かにあった。 けれど、それに触れるには まだ距離があるようにも感じられた。
冬明けの光は、 前に進むための合図ではなく、 ただそこにあるだけの“気配”だった。 その気配が、 今日の空気をゆっくりと深めていく。
